
ビジネスプランって何をどう書けばいいんだろう…
押さえるべきポイントってありますか?
ビジネスプランとは、「審査員や投資家、仲間にしたい創業者候補などに、どんなビジネスを起業するのか説明するための計画書」のことです。
人に分かりやすくプレゼンするには、下記の基本7項目を整理して書くのがポイントです。
1.問題(Problem)
2.解決策となる製品やサービス(Solution)
3.競合優位性(Competitive Advantages)
4.顧客(Customer)
5.ターゲット市場(Target Market)
6.ビジネスモデル(Business Model)
7.収支計画(Financial Plan)
この記事では、ビジネスプランの書き方のポイントについて具体例を交えて解説します。
とても長い記事ですが、一気にすべて読む必要はありません。
目次をタップすれば好きなところから読めるので、必要なところだけをサクッと見てください。
ビジネスプランが完成するまで、ぜひ何度もこの記事をチェックしてくださいね。
確実に力が身につくはずです!
■ この記事で分かること
・ビジネスプランに書くべき基本7項目のポイントや書き方が分かります。
・基本7項目以外でよく問われる項目の書き方についても分かります。
・審査員や投資家がどんな点を評価するのか? 評価しないのか? が分かります。
なお、実際にコンテストに応募されたビジネスプランの実例を見たい方は、こちらの記事を参考にしてください。
本記事の書き方と、高校生5人の実例を一緒に見れば、ビジネスプランへの理解がグッと深まりますよ!
事例その1「筋飯 Kitchen」は、お店を経営するビジネスプランです。
事例その2「BLUESTAR」は、中学生・高校生を顧客にしたビジネスプランです。
事例その3「C-OD 錠」は、テクノロジーベースのビジネスプランです。
事例その4「初め美(そめび)」は、Web サービスのビジネスプランです。
事例その5「ROCRAYONS」は、社会課題解決型のビジネスプランです。
(※ 目次をクリックすれば、どこからでも読めます)
ビジネスプランとは

ビジネスプランとは、「投資家や審査員、仲間にしたい創業者候補などにどんなビジネスを起業するのか説明するための計画書」のことです。
この定義から分かる通り、ビジネスプランは人に説明することが前提です。
自分だけが分かればいい、他の人から見ると分かりづらいビジネスプランでは、高い評価は得られません。
他の人から見て分かりやすいストーリー性を持ったプランを作ることが大事です。

基本7項目の「型」を身につければ、分かりやすいストーリーでプレゼンできますよ!
ビジネスプランの書き方 基本7項目
ビジネスコンテストそれぞれで応募フォームはちがいますが、書くべき内容はおおよそ同じです。
まずは、最重要の基本7項目を押さえてください。
それぞれの書き方のポイントは次章で詳しく解説したいと思います。
1.問題(Problem)
このビジネスで解決したい問題は何ですか?
2.解決策となる製品やサービス(Solution)
その問題をどうやって解決するのでしょうか?
3.競合優位性(Competitive Advantages)
なぜ顧客は、競合製品ではなくあなたの製品やサービスを買わないといけないのですか?
4.顧客(Customer)
その製品やサービスにお金を払ってくれるのは誰ですか?
5.ターゲット市場(Target Market)
その製品やサービスは具体的にどんな市場をねらって売り込みますか?
6.ビジネスモデル(Business Model)
その製品やサービスはどんな販売方法、価格戦略、広告宣伝で販売しますか?
7.収支計画(Financial Plan)
年間の売上・コスト・利益はどの程度で、起業後どれくらいで利益がプラスになりますか?
以上が、ビジネスプランの基本7項目です。
なぜこの7項目かというと、現実の起業でも、投資家(VC, ベンチャーキャピタルやエンジェル)へのピッチプレゼンでほとんど必ず説明が求められる項目だからです。
基本7項目のオススメの書き方、例
問題(Problem)
■ 同じ意味の項目名
プランを思いついたきっかけ・目的、顧客の抱える課題・ニーズ、ビジネスアイデアの発想・動機 など

このビジネスで解決したい問題は何ですか?

顧客が「お金を払ってでも今すぐ解決したい!」という
〇〇の問題を解決します!
ビジネスの文脈では、問題(Problem)とは「お金を払ってでも今すぐ解決してほしい苦しみ」と言えます。
問題の中でもとくに大きな問題を痛み(Pain)と呼び、Pain をいかに解決できるかが起業の成功/失敗に大きく影響します。
逆に、
「面倒くさいしストレスだけど、お金を払うまでもない」
「あればいいけど、今すぐ必要ではない」
という小さな問題に取り組んでも、製品やサービスは売れません。
例えば、高校生にとっては「試験の成績が下がった」という問題は Pain になりうるので、塾という解決策にお金を払う理由になります。
しかし、例えば「学校に持って行く教科書が重い」という問題は、確かにストレスだけども「月々 980 円を払えば代わりに教科書を持って行きますよ」と言われても、お金を払う人は少ないでしょう。

一見すると Pain に見えるけど、お金を払うまでもない問題はたくさんあります。
勘違いしないよう注意です!
また、その問題を抱えていそうな人に必ずヒアリングをしてください(顧客ヒアリング、Customer interviews と言います)。
私も何度も経験しましたが、「これが問題だ!」と思ったのにヒアリングするとぜんぜん困っていない、「そんなことにお金を払えないよ」と言われることが非常に多いのです。
あとになって「このビジネスプランじゃダメだ!」と分かると精神的ダメージが大きいので、ぜひ最初からヒアリングをしてください。
また、アンケートもよい手段ですが、アンケートだけでは「本当に Pain なのか?」が分かりません。質問を重ねて問題を深掘りすることができないからです。

問題を数字で表せるアンケートと、数字では表せない顧客ヒアリングを組み合わせれば、Pain を広く、深く特定できますよ。
問題は、基本7項目の中で最重要項目です!
「どんな問題を解決したいか決める!」これが起業のスタート地点です。
問題があいまいだと、他の項目すべてがあいまいになってしまうので、ぜひ力を入れて書いてくださいね。
(なお、実際の起業での問題の捉え方については、こちらの記事も参考にしてみてください)
解決策となる製品やサービス(Solution)
■ 同じ意味の項目名
商品、ビジネスアイデアの価値、ビジネスアイデアの特徴、顧客未来図 など

その問題をどうやって解決するのでしょうか?

〇〇の問題を徹底的に解決できる機能を持った
製品やサービスを開発し、販売します!
問題を解決する具体的な製品やサービスを解決策(Solution)と言います。
なお、教科書のような形あるモノを製品(Product)、学習塾のような無形の価値を提供することをサービス(Service)と言います。
解決策は、必ず問題とフィットする(整合性が合う)ように書いてください。
問題と関係のうすい解決策を書いてはいけません。

例えば、「試験の成績が下がった」という問題への解決策として「やる気を上げるカウンセリング」と書くと、少しずれているかもしれません。カウンセリングは悪くはありませんが問題に直接フィットしていないので、徹底的な問題解決にはならないかもしれません。
それよりも「短期集中でスコアを上げる苦手対策講座」の方が、「試験の成績が下がった」という問題とフィットしているので、顧客が今すぐお金を払いたくなる解決策になりそうです。
問題と解決策のフィットは、現実の起業において最重要事項の一つです。
問題と解決策がフィットしていないと、「なぜこの製品やサービスが必要なのか?」が顧客に伝わらないので、無残なほどまったく売れません。
シリコンバレーなどスタートアップ界隈では、よく Problem-Solution Fit (PSF) と言い、投資家が真っ先に見るところです。
Problem-Solution Fit は本当に大事なので、いくつか実際の改善例を見てみましょう。
例えば、GTE ビジネスプラン・グランプリの英語部門で最優秀賞となった「ROCRAYONS」の例を見てください。
メンターからのアドバイス前
問題 : 乳幼児はものをつかむ力が弱く、クレヨンを持ちづらい。
解決策: つかむ力が弱くても持ちやすい、オシャレな色合いのクレヨンを開発・販売する。
メンターからのアドバイス後(決勝)
問題 : 発達障害のある子どもには、ものをつかむ力が弱かったり色覚の過敏性があったりして文字や絵を描くことが困難な子どもがいる。
その困難さが不登校や問題行動につながることがある。
解決策: つかむ力が弱くてもはっきりした文字や絵が描け、感覚過敏性に配慮した色合いのクレヨンを開発・販売する。
決勝のときの方が、問題がより具体的に特定されており、またその問題をうまく解決できる製品になっているのが分かると思います。
問題と解決策について、もう一つ注意点があります。
製品やサービスは、問題を特定した後で考えるようにしてください。
問題を特定する前に製品やサービスを考えてしまうと、誰も困っていない問題に取り組んでしまうリスクがあります。例えば、GTE ビジネスプラン・グランプリ日本語部門のファイナリスト「C-OD 錠」の改善例を見てください。
メンターからのアドバイス前
解決策: 口に入れると溶けるラムネ菓子状の栄養食品を開発・販売する。
問題 : 栄養食品は飲みにくいものが多い。
メンターからのアドバイス後(決勝)
問題 : 飲み込む力が弱った高齢者は、飲食時に誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)のリスクがある。
解決策: 飲み込む力が弱った高齢者でも飲めるラムネ菓子状の栄養食品を開発・販売する。
書類審査段階では、解決策を先に考えてしまったため問題の程度が弱く、また誰の問題なのかはっきりしていませんでした。
そのため決勝前のアドバイスでは、誰のどんな問題を解決したいのかを明確にしました。
その結果、解決策である製品自体は変えていませんが、とても明確で強い問題に取り組むビジネスプランになったと思います。
繰り返しですが「どんな問題を解決したいのかを決める」ことが起業のスタート地点です。
皆さんのビジネスアイデアがうまくいくかどうかは、強い痛みのある問題をどれだけ具体的に特定できるかにかかっています!
競合優位性(Competitive Advantages)
■ 同じ意味の項目名
製品やサービスの強み・特長、類似商品、独自性、既存の代替品、他社との差別化、市場競争力、セールスポイント など

なぜ顧客は、競合製品ではなく
あなたの製品やサービスを買わないといけないのですか?

競合製品にはない〇〇という機能が、△△という問題を徹底的に解決できます。
これが、顧客が私たちの製品を買う理由です!
競合優位性(Competitive Advantages)とは、顧客が競合他社の商品ではなく皆さんの製品やサービスを「買う理由」となるものです。
似たような商品が並んでいるとき、皆さんは、テレビ CM で見るような有名企業の商品と、聞いたこともない会社の商品のどちらを買いたいと思うでしょうか?
とくべつの理由がない限り、有名企業の商品を買う人が多いと思います。
有名企業の商品にはブランド力があり、安心感、信頼性、知名度などがあるからです。
だから、競合優位性をハッキリさせるのはとても大事です。
現実の起業では、「買う理由」が弱い製品やサービスは無残なほどまったく売れません。
競合優位性は、比較表で項目ごとに強みと弱みを整理すると分かりやすいです。下記の例が参考になるでしょう。
比較項目 | 自分たちの製品 | 競合 A | 競合 B |
---|---|---|---|
問題 a を解決する機能 | 〇 徹底的に解決できる | 〇 徹底的に解決できる | △ 影響を減らせるだけ |
問題 b を解決する機能 | 〇 徹底的に解決できる | × 解決できない | △ 影響を減らせるだけ |
価格 | × 1本 XXX 円 | △ 1本 XXX 円 | 〇 1本 XXX 円 |
販売場所 | △ 自社店舗のみ | 〇 全国のコンビニ | 〇 全国のコンビニ |
宣伝広告方法 | △ チラシとウェブ広告 | 〇 テレビ CM | △ 雑誌広告 |
総合評価 | 〇 起業したてで知名度はなく 価格も高いが、 他社にできない問題 b を 徹底的に解決できる | △ ブランド力は抜群だが、 問題 b を解決できない | △ 価格は一番安いが、 問題 a も b も 徹底的に解決できない |
1つ注意点があります。
学生だけでなく社会人のビジネスプランでもよくある間違いですが、自分たちに都合が良いところだけを比較しないでください。自分たちが優れているところしか書いていないと、審査員は嘘くさく感じます。

(自分たちに都合よく競合を書いているな…
この製品が不利なところを質問してやろう)
価格やブランド力など、競合他社と比べて劣っている部分もよく調べて、正直に書いてください。
劣っている項目があっても、強い痛みのある問題を徹底的に解決できる優れた項目があれば問題ありません。それが皆さんの商品「独自の価値」になります!
顧客(Customer)
■ 同じ意味の項目名
お客さん、顧客層、顧客セグメント など

その製品やサービスに
お金を払ってくれるのは誰ですか?

〇〇という全体の中の、
とくに△△の属性を持つ人たちです!
顧客(Customer)とは、製品やサービスにお金を払う人のことです。
製品やサービスによっては、実際に使う人と、お金を払う人が別々のこともよくあります。この場合は、実際に使う人をユーザー(User)と言います。
例えば、Google や YouTube を見る皆さんユーザーは無料ですが、そこに広告を出す企業が広告料を支払っています。また例えば、学習塾のユーザーである学生はお金を払っていませんが、保護者が塾にお金を支払っています。
注意点として、顧客は細分化して具体的に書くようにしてください。
「高校生」「女性」などのようにざっくりとした内容だと、製品やサービスを誰にどう売るのかあいまいになってしまいます。
現実の起業では、色々な顧客が使えそうな製品やサービスは、誰のどんな問題を解決するものなのか顧客に伝わらず、無残なほどまったく売れません(私自身が経験しています)。

例えば、マクドナルドの顧客は老若男女どんな人でもあてはまりますが、テレビ CM などで宣伝広告をするときにはターゲット顧客を細分化してアピールしています。
ハッピーセットなら小さい子どもを持つ「ファミリー層」に、サムライマックなら主に「社会人男性層」にアピールしますよね。
それだけ顧客を細分化して具体化するのはビジネスで重要です!
ターゲット市場(Target Market)
■ 同じ意味の項目名
標的市場、対象市場、TM、市場規模 など

その製品やサービスは具体的に
どんな市場をねらって売り込みますか?

〇〇市場全体の中で、私たちがねらうターゲットは△△市場です。
将来的に△△市場は、こういう社会要因で拡大していきます!
ターゲット市場(Target Market)とは、自分たちの製品やサービスを買う可能性がある顧客全体の中で、自分たちが売り込んでいく特定の顧客層のことを言います。

ちょっと難しそうな定義ですが、マクドナルドの例が分かりやすいと思います。
マクドナルドは「外食市場」でビジネスをしていますが、ハッピーセットのターゲット市場は「外食市場全体の中でも、小さな子どもがいるファミリー層」です。
このように市場を細分化して売り込むのが大事です。
ターゲット市場を決めたら、その市場規模がどれだけあるかもできるだけ調べてください。
インターネットで調べれば、業界によって市場規模(業界全体の販売数量や取引額)が出ているところもあります。また、総務省統計局のデータを使えば自分でざっくりとした市場規模を算出することもできます。
また、将来的に市場が拡大していくのか? それとも衰退していくのか? はビジネスで非常に重要です。
例えば、いまからレンタルビデオ店を起業してもレンタルビデオ市場は衰退の一途なので、ビジネスは先細りになりそうです。
逆にウェブストリーミングサイトを起業しようとすれば、この市場は拡大しているのでビジネスが大きくなるかもしれません。
拡大する市場で起業すれば、例えば1年目は日本のウェブストリーミング市場、3年目はアジア圏のウェブストリーミング市場、とビジネスを広げやすくなります。
ターゲット市場の理解はなかなか難しいので、具体例を紹介します。DECA JAPAN ビジネスプランコンテストで優勝したチーム「Hair Manager」は、「髪の毛を乾かす時間が長すぎるし、髪の毛が乾くまで何もできない」という問題に対して、髪を乾かす時間中に自由に行動できる帽子型ヘアドライヤーを開発・販売するというビジネスプランを作成しました。このビジネスプランのターゲット市場は下記の通りです。
■ DECA JAPAN ビジネスプランコンテスト優勝チーム「Hair Manager」
問題 : 髪の毛を乾かす時間が長すぎるし、髪の毛が乾くまで何もできない。
解決策: 髪の毛を乾かす間に他のことができる、帽子型のハンズフリーのドライヤー「Hair Manager」を開発する。
ターゲット市場:
TAM (Total Available Market) 日本の女性 約 6,500 万人を、このビジネスがリーチできる全体市場として想定する。
SAM (Serviceable Available Market) 日本の女性全体のうち、30歳から44歳までの働く女性 約 900 万人を、実際に顧客としてアプローチできる市場として想定する。
TM (Target Market, または SOM: Serviceable Obtainable Market とも) 30歳から44歳までの働く女性全体のうち、髪型や美容に強い関心のある約 300 万人の顧客層を、最終的にこのビジネスで現実的にアプローチできるターゲット市場とする。
市場の拡大戦略 最初は日本市場だけでビジネスを展開するが、3年目からはインドネシアでもビジネスを開始する。インドネシアを想定した理由は、人口動態として働く若い女性人口が多く、また可処分所得も増大傾向にあり、市場の拡大が期待できるからである。
上記の例を基に、ターゲット市場を決めるときのポイントを解説します。
まず、ターゲット市場を決めるときは必ず問題をスタート地点にします。問題があいまいだとターゲット市場を絞り込むことができないので注意してください。
ターゲット市場を考えるときは、最初に全体を考えてからどんどん絞り込んでいきます。TAM ⇒ SAM ⇒ TM の順番で考えることで、皆さんのビジネスプランが現実的にアプローチできるターゲット市場を明確にできます。
最後に、市場をどう拡大していくかを考えます。「グローバル展開する」「顧客層を広げる」「製品を増やす」などで、ビジネスをより大きくする戦略を考えてみてください。

TAM, SAM, TM の考え方は、実際にやってみないと難しいと思います。
宣伝になりますが、GTE ビジネスプラン・グランプリの応募者全員フィードバック、およびファイナリスト向けのメンタリングではターゲット市場についてアドバイスをしているので、参加を検討してみてください。
ビジネスモデル(Business Model)
■ 同じ意味の項目名
販売(提供)方法、広告方法、必要な経営資源(ヒト、モノ、技術・ノウハウ)、製造・調達方法、販路、チャネル など

その製品やサービスは
どんな販売方法、価格戦略、広告宣伝で販売しますか?

この製品は、こういう販売チャネルを使って、単価はいくらで、
こういう広告を出して顧客に販売促進し、収益を得ます!
ビジネスモデル(Business Model)とは、収益を得るための販売方法、価格戦略、宣伝広告方法などの計画を言います。
ビジネスモデルは文章だけでは表現しにくいので、図を使ってお金の出入りを図示することが多いです。
下記の例のように、中心に自分たちを置き、右側は顧客からの収益、左側はお金の支払い先を書くと分かりやすいです。参考にしてみてください。

販売チャネル
注意点として、ビジネスモデルにはどこを経由して製品やサービスを販売するのか? を必ず盛り込んでください。これを販売チャネル(Sales channel)と言います。
販売チャネルがどこかによって、利益や販売数量が大きく変わります。
例えば販売チャネルを百貨店やショッピングモールに出店したり、楽天や Amazon などのオンラインモールで商品を売ったりすると、集客力は高いけれども約 30% 前後の多額の販売手数料がコストとしてのしかかってきます。

例えば 1,000 円の商品を売ったら、300 円をモールに支払わないといけないので、手元に残るお金は 700 円です。
さらにそこから、部品調達費や広告費、人件費などを支払わないといけないので、最終的な利益はかなり小さくなるかもしれません。
一方で、販売チャネルを自社サイトにする場合は、手数料はさほどかかりませんが、何のブランド力もない起業したての会社の製品やサービスは簡単には売れません。
現実の起業では、自分たちの存在自体知られることもなく、無残なくらいまったく売れずにビジネスを辞めてしまう例がすさまじく多いのです(こうした例はメディアで取り上げられづらいので、起業の華々しい面に隠れがちですが…)。
価格戦略
販売方法と並んで考えることは、価格戦略(Pricing strategy)です。
価格をいくらにするか決めるのは、本当に難しいです。
価格を競合製品との比較で決めるのか? コストの積み上げで決めるのか? 顧客が得られる価値を基にして決めるのか? さまざまな考え方があります。
また、同じ製品やサービスであっても複数の価格をつけることが可能です。
数個まとめて買うなら割引する、基本無料だけど制限を外したり追加機能を使う場合は月々いくらにする、個人顧客と法人顧客(企業、行政、学校など)とでちがう価格にする、などさまざまな方法があります。
価格戦略は本当に難しいので、実際の起業では一度決めた価格を変更することもありえます。
シリコンバレーの有名な起業支援団体「Y Combinator」のサイトに、非常に参考になる記事と動画がありますのでぜひ参考にしてみてください(英語のみ、https://medium.com/swlh/y-combinator-kevin-hale-startup-pricing-101-38b8f8221476)。
広告宣伝
同様に、広告宣伝(Advertising または Promotion)についても決めます。
お金をかけてテレビや雑誌などに広告を出すのか? インターネット上の検索エンジンや情報サイト、SNS の広告枠などに広告を出すのか? それともお金をかけずに SNS などで宣伝していくのか? などを具体的に考えてください。
(書く場所は、ビジネスコンテストによってさまざまですがビジネスモデルの中に書いても OK ですし、ターゲット市場や解決策の中に書いても OK です)
注意点として、どう宣伝広告をするのかは可能な限り具体化してください。
学生だけでなく社会人のビジネスプランを見ていてよく見かけますが、「SNS で拡散する」「ウェブサイトを作って周知する」といった大雑把な内容では評価できません。
現実の起業では、何の戦略もなく Twitter に情報を流しても表示されるのは 2, 3人、ウェブサイトを作っても月間アクセス数は 4, 5人というありさまで、無残なほどまったく売れません)(くどいですが私自身が経験しています…)。
例えば、「業界の人々が集まる展示会にブースを出す」「顧客の認知度の高いサイトに広告を出す」「まずはお役立ち情報を Twitter に1日5回3か月間発信して人を集めた後に製品情報を流す」「自ら駅前でチラシ配りをする」など、可能な限り宣伝広告方法を具体化してください。
収支計画(Financial Plan)
■ 同じ意味の項目名
収入の流れ、コスト構造、採算計画、実現性、継続性、 など

年間の売上・コスト・利益はどの程度で、
起業後どのくらいで利益がプラスになりますか?

このビジネスの年間売上・コスト・利益はこれくらいで、
起業後6か月までは利益がマイナスですが、7か月目からプラスに転じます!
収支計画(Financial Plan)とは、ある一定期間の売上・経費(コスト)・利益の見込みを算出することです。
なお、ある一定期間とは、一般的なビジコンでは起業後1年間となっていることが多いです(実際の起業で投資家にプレゼンするときは、起業後1年目から5年目程度までを書くことが多いです)。
売上
売上(Sales または Revenue)とは、製品やサービスを顧客に提供することで得た収入です。
売上は、「顧客数 × 単価 × 販売数量(または頻度)」という計算式で算出できます。
例として、GTE ビジネスプラン・グランプリ日本語部門のファイナリスト「染め美(そめび)」と「筋飯 Kitchen」の例を見てください。
■ 製品の例(染め美(そめび))
ニキビで悩む高校生向けニキビケア用品の年間売上:
顧客数 1,000 人 × 単価 11,000 円 × 顧客一人当たり2本購入 = 22,000,000 円
■ サービスの例(筋飯 Kitchen)
筋肉をつけたい人向け冷凍ミールキットサブスクの年間売上:
顧客数 1,000 人 × 月額 2,200 円 × 12 か月 = 26,400,000 円
計算式をすべて手計算ですると大変ですしミスも起きやすいので、Google Spreadsheets や Excel などの表計算アプリを使うとよいでしょう。

収支計画を作るときは、「単位(円、千円、ドルなど)」と「桁区切りのカンマ(1,000 など)」を必ず書くようにしてください。
例えば↓のように書くと非常に分かりづらいですよね。
* 〇〇製品の売上 30000000
* △△製品の売上 三千万円
学生が書いたビジネスプランで非常に良く見かけるので、ぜひご注意ください!
コスト
コスト(費用とも言う、Cost)とは、ざっくり言うと事業を行うために必要な支出のことです。
コストの中でも、部品の仕入れ(しいれ)や製造など製品を作るために直接必要なコストを売上原価(仕入高とも言う、COGS: Cost of Goods Sold)、それ以外にかかるコストを経費(Expenses)と言います。
また、売上から売上原価を引いたものを売上総利益(粗利益とも言う、Gross Margin)と言います。
コスト、とくに経費は非常に幅広く、算出方法もそれぞれちがってややこしいです。
一つの例ですが、GTE サマースクール 2019 で最優秀賞をとった「Madre」の例が参考になると思います。
■ Madre(ベビーシッターマッチングサイトのビジネスプラン)の例
売上
・マッチング数 10,000 件 × (平均客単価 10,000 円 × 手数料 10 %) = 10,000,000 円
売上原価
・IT エンジニアへの外注費: 3 人 × 人月単価 1,000,000 円 = 3,000,000 円
売上総利益: 売上 – 売上原価 = 7,000,000 円
経費
・レンタルオフィス家賃: 月額 50,000 円 × 12 か月 = 600,000 円
・レンタルサーバー費用: 月額 5,000 円 × 4 台 × 12 か月 = 240,000 円
・開発用ツール費用 : 月額 10,000 円 × 12 か月 = 120,000 円
・クレジット決済手数料: マッチング件数 10,000 件 × 平均客単価 10,000 円 × 3% = 3,000,000 円
・創業者の役員報酬 : 月額 50,000 円 × 3 人 × 12 か月 = 1,800,000 円
・各種社会保険料 : ざっくり役員報酬の 30% と想定 = 540,000 円
・広告費 : 月額 100,000 円 × 12 か月 = 1,200,000 円
・ベビーシッターの求人広告費(年間契約): = 300,000 円
・水道光熱費 : 月額 10,000 円 × 12 か月 = 120,000 円
・その他 : 旅費交通費、印刷費、各種手数料等 = 500,000 円
⇒ 経費合計 8,420,000 円
利益: 売上総利益 – 経費 = マイナス 1,420,000 円
利益
利益(Profit)とは、事業の儲け(もうけ)のことで、「売上総利益 – 経費」という計算式でざっくりと算出できます(または「売上 – コスト」)。
また、実際のビジネスでは利益率(Profit rate)もよく分析されることが多く、「利益 ÷ 売上 × 100」のパーセンテージで算出できます。例えば利益が 1,000 円で、売上が 10,000 円なら利益率は 10% です。
業種にもよりますが、利益率は 10% 以上、可能であれば 20% を超えるような高利益率のプランを考えてみてください。
利益がプラスであれば「黒字」、マイナスであれば「赤字」と言います。
実際の起業では、業種にもよりますが起業1年目から利益が黒字になることは非常に難しいです。
起業後1,2年は利益が赤字であっても、できるだけ早く黒字になるようなビジネスプランを考えてみてください。
収支計画について1つ注意点です。
これは非常によく見かける良くない例ですが、起業後すぐに売上がグングン伸びるような収支計画は、審査員に嘘くさく感じさせてしまいます。審査員は、起業は簡単ではないとよく知っているのです。

(起業後すぐにこんなに売上が上がるはずがない。
見通しの甘さを質問してやろう)
実際の起業では、例えばオンラインサービスであれば、起業後6か月は開発に集中するので売上ゼロ。開発が完了しても顧客の認知度が上がるまでお小遣い程度しか売上が立たない。起業後1年たっても売上はほんのわずか、というのが実態です。
もし起業後すぐに売上がグングン伸びる見込みがあれば、必ず根拠を明確にしてください。
例えば、「起業後すぐに広告宣伝費に大金を投じて一気に認知度を上げる」「開発や仕入れがなく完全受注生産のビジネスモデルである」「すでに世の中にあり世間でよく認知されているビジネスで起業する」などです。
資金調達
起業するには、元手となるお金が必要です。起業に必要なお金を集めることを資金調達(Fund raising)と言います。
資金調達先にはいくつか種類があり、自己資金、家族や友人などからの資金、ベンチャーキャピタルやエンジェルからの投資、借入金(銀行融資)、行政からの補助金、クラウドファンディングなどがあります。
なお、SDGs, 社会課題解決型のビジネスコンテストでは、顧客からの売上が得られないビジネスプランを作る場合があります。例えばホームレスへの炊き出しや貧困家庭への学習塾などです。
顧客からお金を得られないビジネスプランの場合は、起業時点だけでなく起業後もずっと顧客以外の誰かから資金を調達しなくてはなりません。
例えば、行政からの補助金や業務委託費、寄付、財団や企業からの資金援助などです。

ビジネスの「継続性」を担保するためには、資金調達は非常に重要な要素です。
どこから、いくら調達するのか、またなぜその人は資金を出してくれるのか?
根拠も含めて資金調達を考えてみてください。
KPI
KPI とは、Key Performance Indicators(重要業績評価指標)のことで、「目標をどのくらい達成しているかを測定するモノサシ」のようなものです。
売上、利益、顧客数、店舗数、月間ページビュー数など、数字ではかれる指標を KPI として書いてください。また、どのくらいの期間でその KPI を達成するかも決めます。例えば、「起業1年後に売上1千万円」などを KPI に設定します。
KPI はなぜ大事なのでしょうか?
KPI があることで、どのくらいの期間でどんなアクションをすればよいのか、見通しがつきやすくなります。
また、KPI がビジネスの進捗(しんちょく)が遅いのか速いのかをはかるモノサシとなるので、これからのアクションを立てやすくなります。
あいまいで人によって見方が変わるような KPI だとモノサシとして使えないので、必ず数字ではかれる指標を KPI にしてください。
基本7項目以外の頻出項目 オススメの書き方、ポイント、例
ビジネスプランに何を書くかは、ビジネスコンテストそれぞれでちがいます。
基本7項目以外に、応募フォームでよく見かける項目について簡単に解説したいと思います。
サマリー、概要
ビジネスプランの概要(Summary)を書く項目です。20 字~ 50 字程度の短文が多いです。
たいていはビジネスプランの一番最初の項目になっていますが、後回しにして一番最後に書くのがオススメです。
なぜなら、ビジネスプランを短い文字数で要約するのは大変難しく、最初に書こうとすると詰まってしまうことが多いからです。
実現に向けて考えられる課題、ハードル、リスク
ビジネスプランの実現に向けて越えなければならないことを書く項目です。
例えば、「資金調達がうまくいくために何をする」「開発には特別なテクノロジーが必要なので大学など研究機関と共同開発をする」「競合の大手企業が邪魔をするリスクがあるので自社独自の特許を取る」など考えてみてください。
実現可能性
ビジネスコンテストによっては、実現可能性という項目に色々書くような応募フォームがあります。
例えば、「顧客ヒアリングで「この製品が出たら〇〇円で買う」と複数の回答を得た」「開発に必要なテクノロジーはこの大学から独占使用権のライセンスを得られる」「栄養補助食品だが薬事法には抵触しない」「起業後は専任のエンジニアが開発にあたる」など考えてみてください。
継続性、サステナビリティ
SDGs, 社会課題解決型のビジネスコンテストでよく問われる項目です。
例えば、「製品の販売で自分たちだけでなく途上国の農家にも正当な利益が得られる」「製造や物流にかかる環境負荷が低い」など考えてみてください。
注意点として、この項目で書くべきなのは社会課題についてだけではありません。
起業してビジネスを継続していくには資金が必要です。
とくに顧客からお金を得ることが難しいビジネスプランの場合、どこから、いくら、どうやって資金調達(Fund raising)をしていくのか、資金調達計画をぜひ具体化してください。
社会性、社会貢献
SDGs, 社会課題解決型のビジネスコンテストでよく問われる項目です。
例えば、「途上国に雇用が生まれたり貧困家庭の経済力が上がったりする」「生きづらさを感じている人が自分らしく生きられるよう助ける」「健康寿命が延びて高齢者の QOL(Quality of Life)が上がる」など考えてみてください。
また、お金もうけそれ自体が非常に大きな社会貢献活動になります。
お金を儲けるために人を雇えば雇用が生まれ、人を雇用すれば社会保険料を支払うので日本全体の医療福祉に貢献できます。また、税金を支払うことで教育、福祉、途上国支援などに大きな貢献ができます。
皆さんのビジネスプランでお金儲けができるのであれば、社会貢献として堂々と書いてみてください。
技術、テクノロジー
テクノロジーを重視するビジネスコンテストでよく問われる項目です。
テクノロジーを重視するビジコンでは、「テクノロジーを自分で調査し、理解する力」が求められます。
表面的なニュースや技術情報だけで、テクノロジーを知った気になってはいけません。
「なぜそのテクノロジーが必要とされているのか?」「そのテクノロジーが機能する原理は?」「そのテクノロジーの可能性と限界は?」
これらを理解して、またできれば実際にそのテクノロジーを使ってみた上で、テクノロジーの内容や利用方法を書くようにしてください。
さいごに: ビジネスプランのストーリー
繰り返しになりますがビジネスプランとは
「審査員や投資家、仲間にしたい創業者候補などに対して、どんなビジネスを起業するのか説明するための計画書」のことです。
人にわかりやすく説明するためには、「審査員から問われること」に対する回答となるようにビジネスプランを書いてください。
1.問題(Problem)
このビジネスで解決したい問題は何ですか?
2.解決策となる製品やサービス(Solution)
その問題をどうやって解決するのでしょうか?
3.競合優位性(Competitive Advantages)
なぜ顧客は、競合製品ではなくあなたの製品やサービスを買わないといけないのですか?
4.顧客(Customer)
その製品やサービスにお金を払ってくれるのは誰ですか?
5.ターゲット市場(Target Market)
その製品やサービスは具体的にどんな市場をねらって売り込みますか?
6.ビジネスモデル(Business Model)
その製品やサービスはどんな販売方法、価格戦略、広告宣伝で販売しますか?
7.収支計画(Financial Plan)
年間の売上・コスト・利益はどの程度で、起業後どれくらいで利益がプラスになりますか?
これらの「審査員からの問い」に回答できれば、説得力あるストーリー性を持ったビジネスプランになりますよ!
皆さんが起業やビジネスコンテストに挑戦することで、より良い進路の選択肢を見つけることを祈っています!
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